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ASD(自閉スペクトラム症)傾向を持つお子さんは、その特性のために学校環境へなじむことが難しくなり、不登校となるケースがあります。

本記事では、ASDとはどのようなものなのか、不登校との関連、診断やサポートの仕方について紹介していきます。

この記事を書いた人

不登校なんでも相談室管理人の似顔絵

吉田 克彦(公認心理師・精神保健福祉士)

スクールカウンセリング歴25年超、小学校・中学校・高校(全日制・定時制・通信制)でのスクールカウンセラーとしての活動経験あり。東日本大震災の被災地心理支援、業界最大手の化学製品会社の常勤カウンセラーなどを経て、現在は合同会社ぜんと代表。
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ASD(自閉スペクトラム症)とは?

ASDの特徴

ASD(自閉スペクトラム症)の方は、以下のような特徴をもっています。

・対人関係が苦手
・こだわりが強い
・感覚の異常(過敏/鈍麻)
・記憶力のかたより
・全身や手先の運動が苦手

特徴の強さや現れ方は、ひとりひとり異なります。それに伴い、生活上の困難があらわれる部分も変わってきます。人によって、知的障害や言葉の遅れを持つ方もいます。

ASDは、乳幼児期から認められる脳の働き方の違いによって起こるもので、親の子育てが原因となるわけではありません。

かつては知的障害と言葉の遅れを伴う「自閉症」、知的障害はないが言葉の遅れのある「高機能自閉症」、知的障害も言葉の遅れもない「アスペルガー症候群」といった呼び名に分かれていましたが、現在はこれらを総称してASD(自閉スペクトラム症)と呼ぶようになっています。

ASDへの対処のしかた

ASDは生まれ持った特性であるため、今のところ「治療法」はありません。

本人が「何に困って、どうしたいのか」を明確にした上で、必要なスキルを身につけたり、課題を克服することが必要となります。そのためには、保護者や周囲の支援体制を整えていくことで生活がしやすくなります。

かんしゃくが強い場合や、うつや不安といった症状を伴っている場合には、薬物治療を行うケースもあります。

不登校とASDの関連

ASDのお子さんは、周囲との関係を築くことが苦手で、集団の中よりもひとりでマイペースに過ごすことを好みます。コミュニケーションの困難さから、人間関係のトラブルを抱えるケースも少なくありません。

また、こだわりの強さや感覚の過敏/鈍麻から、集団での行動や学校の環境になじめず、苦痛を感じる場合もあります。
記憶力のかたよりがあったり、文字が書きづらいなど手先の動きに苦手がある場合は、学習面の困難が生じることもあるのです。

ASDの特性を持つお子さんにとって、学校の環境は試練の連続といってもよい状態です。
このために学校に行くのが辛くなり、不登校へとつながることがあります。

ASDかどうかの判断

ASDの特徴は幼少期から認められ、多くの場合3歳までに診断ができると言われています。診断を受けるには、病院への受診が必要です。

発達障害が広く知られつつある現在では、1歳半検診や3歳児検診で指摘を受け、早期に医療へとつながるケースもあります。しかし、知的障害を伴わず言葉の遅れもない場合には、就学後や成人してから診断を受けることも珍しくありません。

お子さんの振る舞いから、もしかして……と思い当たる点があれば、まずは保健室の先生やスクールカウンセラーに相談してみるのもよいでしょう。
自治体で発達相談を受け付けている場合もあります。お住まいの地域の情報を調べてみてください。

病院に相談をする場合は、小児神経科や児童精神科などが、学齢期のお子さんを専門的にサポートしてくれます。一般の小児科や精神科でも発達相談を受け付けているところがありますので、病院のウェブサイトなどをチェックしてみましょう。

ASDのサポートに利用できる支援

ASDの診断を受けたとき、もしくは診断基準に至らなくてもASD傾向が強いと判断されたときに、不登校など生活上の支障が出ている場合は周囲の支援が必要になります。

この項目では、利用できる支援についてまとめています。

療育

療育とは、心身に障害をもつ児童に対し、社会人として自立できるように医療と教育をバランスよく行っていくことをいいます。

ASDと診断された場合には、人とのかかわり方を学ぶことが療育のポイントです。少人数のグループで、遊びや作業を通して集団のルールを学んだり、コミュニケーション能力を身につけていきます。

療育は、発達支援センターや医療機関のほか、放課後等デイサービスなど民間の施設でも受けられます。利用にあたっては医師の診断や紹介が必要となります。

登校が難しい状態であっても、環境面で配慮されている療育には通うことができる子もいます。利用をつづけることで、社会との接点や生活リズムを保つことにも役立ちます。

特別支援学級/通級の利用

小学校・中学校の特別支援学級には、ASDの子が所属できる「自閉症・情緒障害特別支援学級」というものがあります。ASDによって通常の学級での生活が難しい場合、特別支援学級ではひとりひとりの状態に合わせた指導を行うことができます。

ある程度通常の学級での授業に参加できる場合は、各教科の授業を通常の学級で学びながら、一部の授業において通級を利用します。ASDの子の場合は、通級において対人関係や社会生活への適応の困難さを軽くするための指導が行われます。

通常の学級での生活に困難があるときには、特別支援学級への転籍によって学校に行きやすくなるケースもあります。

転籍には定められた基準を満たすことと、教育委員会からの認可が必要です。保護者の希望のみで転籍がかなうわけではありませんが、選択肢のひとつとして、先生に相談してみるのもよいでしょう。

ただし、自治体によっては高校進学のための内申点がつかなかったり、再び通常の学級への転籍をすることが困難といったデメリットもあります。また、通常学級からの転籍の場合、お子さん自身がコンプレックスを感じたり、周囲の目を気にすることもあります。転籍にあたっては学校とよく相談し、本人も納得したうえで行うことが重要です。

自宅学習/フリースクールの利用

不登校に至るまでに、心身のエネルギーを使い果たしてしまっていることも少なくありません。そういった場合はまずは休養を優先し、学習は二の次でかまいません。

時間がたって勉強に目が向いてきた場合は、オンラインで自宅学習を支援してくれるサービスもあります。学年にとらわれない学習ができたり、ASDの特性に配慮したシステムを取り入れているものもありますので、お子さんが乗り気であれば利用してみましょう。

また、学校には通いづらくてもフリースクールには足が向くという場合もあります。発達障害にも理解があり、ASDの支援を行っているフリースクールもありますので、お子さんに興味があれば見学や相談をしてみるのもよいでしょう。

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カウンセリングの利用

ASDの方に対するカウンセリングでは、本人を対象として行うものと、サポートをしている家族に対するものがあります。

ご本人に対しては、悩みを傾聴したうえで、状況に応じて困難の解決につながるトレーニングを行っていきます。

また、ご家族に対してカウンセリングを行うことも、周辺環境の調整のためには効果的です。

子どもの発達障害や不登校に直面し、どう対応したらよいか分からない、ストレスを感じているといった場合は、ひとりで抱え込まずにぜひご相談ください。

さいごに

ASD(自閉スペクトラム症)は、生涯付き合っていく生まれつきの特性です。対人関係の苦手さ、こだわりの強さをはじめとした特徴によって、集団になじめず不登校となることの多い障害でもあります。

しかし、療育やカウンセリングを通じたトレーニングや、周囲の環境調整によって、困りごとは軽減することができます。

学校への復帰を目指す場合も、別の道筋で自立を考えていく場合も、決して無理をせず、本人らしさを損なわずに社会参加する方法を探っていくことが大切です。

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引用文献

自閉症スペクトラムの子のソーシャルスキルを育てる本 幼児・小学生編(講談社)監修:本田秀夫、日戸由刈

参考サイト

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
(7)自閉症・情緒障害:文部科学省 (mext.go.jp)
自閉スペクトラム症(ASD) | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知):文部科学省 (mext.go.jp)
子どもの発達障害 「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?アスペルガー症候群などとの違い | NHK健康チャンネル

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投稿者プロフィール

吉田 克彦
吉田 克彦公認心理師・精神保健福祉士
不登校・引きこもりの家族相談を行って20年超。
スクールカウンセリングから、東日本大震災の被災地心理支援、企業内カウンセラーなどを経て、現在は合同会社ぜんと の代表。