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「不登校には必ず理由がある」という考え方は一般的ですが、実際には、明確な原因がないことも多くを占めています。そのため、保護者や教員が原因を探ることは困難です。ここでは、専門家の意見を引用して、考えてみましょう。

ここでは、保護者向けの不登校関連の本から、抜粋してみました。できるだけ情報が新しい方が良いと考え、令和(2019年)以降に出版された書籍や掲載された論文から紹介いたします。なお、引用文中の太字&黄色線は当サイトによる装飾です。

保護者向けの書籍より

まずは、保護者向けの一般書の中から不登校の原因について触れている部分をご紹介いたします。

不登校が始まったきっかけが何か考えることは大切ですが、それが改善されれば登校するようになるとは限りません。そもそも、不登校の原因ははっきりしないこともあります。(p12)

自分でもわからない
「なぜかわからないが気力がわかない」という場合、問い詰められても話しようがありません。問いただされると、思い付きのように次々と理由が変わったり、時にはウソをついたりすることもあります。(p28)

登校しぶり・不登校の子に親ができること 健康ライブラリーイラスト版(講談社 2019年9月) 監修:下島かほる

こちらの書籍は現役の中学校教師でもある下島かほる先生が監修。不登校の初期対応について、イラスト入りでとても分かりやすく説明している本です。「不登校の経験があっても進学率・就職率は高い」など、保護者の方が気になる部分を丁寧に書いてあります。また、具体的な対応方法や声かけについても書かれてあります。ほとんどの図書館にも置かれていますので、不登校に関する本を読みたい場合、一番最初に読むのはこの本をオススメします。
後半に<問いただされると、思い付きのように次々と理由が変わったり、時にはウソをついたりすることもあります>と書かれていますが、なぜ理由が変わったりウソをついたりするのか、それは別の記事で解説いたします。

杏奈さんの登校しぶりも始まって、こちらもまた「原因探し」を始めてしまうかもしれませんが、「原因探し」もほどほどにして、今は、とにかく子供たちが元気になれるようなことをするようおすすめします。これは学校へ行かない日の過ごし方にも当てはまるんですが、心のエネルギーをためられるような楽しいことをして過ごすのがおすすめです。
登校しぶりの原因は「きっかけ」にすぎないことが多く、その場合はそこを追求しても根本解決にはたどり着けません。(p40)

私なりの私見
①不登校の原因や背景は、子ども一人ひとり異なる……不登校という言葉は、子どもが「学校」という社会的場面に参加し活動することを、拒否や回避したりする現象をさしているにすぎません。なぜ、拒否や回避をしてしまうのかは子どもによって様々です。拒否や回避の程度もさまざまなのです。加えて、原因や背景は多くの場合、いくつもの要因が入りまじっており、当事者の子ども自身が言語化しにくいものであることが多いのです。何か問題が生じた時、原因や背景をあきらかにし、それを取り除くことで問題解決を図る、という方法は一般的ではあるのですが、それが通じないのが不登校という問題なのです。(p206)

マンガで見る子どもが学校に行きたくないと言ったら読む本(主婦の友社 2020年4月) 監修:菅野純、マンガ:あらいぴろよ

こちらの本は不登校に関する家族のやりとりがマンガで非常に分かりやすく書かれています。
監修された菅野純先生は、1973年から47年間(執筆時)も不登校の相談事例に取り組まれ、早稲田大学でも教鞭をとられ、多くのカウンセラーを育てられました。それらの経験を踏まえた文章ですので、「不登校あるある」のようなよくあるエピソードも盛り込まれており、非常に分かりやすくておすすめです。
不登校の研究だけでなく、「なぜ不登校にならなかったのか」という調査も行っており、その結果として①登校規範、②プラスの学校体験、③心のエネルギーの充足、④社会的能力の獲得、が登校行動の4条件であると指摘しています。この内容も非常に参考になるものです。

◎不登校の原因は複雑に絡み合っている

 不登校は、子どもの日常に“何か”の出来事が長い期間、解決されずに絡み合った結果として表れる現象です。子どもに、それを聞き出せば、いじめ、先生とのトラブル、勉強への苦手意識など、何らかの理由を答えるかもしれません。しかし実際は、子ども自身の言葉では表現できない“何か”、たとえば発達の特性や、健康問題、家庭での出来事などが複雑に関係しています。
 たとえば学校に行きしぶる子どもが「友達とうまくいかないから」と答えた場合、前出の分類なら「学校起因」に当てはまりますが、その根っこには、幼い頃に親御さんたちに甘えられず愛着障害が生じて、他人と人間関係をうまく結べなくなった、という意外な原因が潜んでいるかもしれません。
 では、なぜ子どもを甘えさせられなかったのかというと、夫婦の不和があって、親御さんが余裕を失っていたのかもしれません(前出でいう「家庭起因」)。
 しかし、実はその不和は、子どもの育てにくさ(前出でいう「本人起因」)を理由に夫婦ゲンカが重なった末のことなのかもしれません……。
 また、前出の調査では、不登校の最多の要因となっている「本人の無気力、不安」なども、原因ではなく、親や教師との関係がうまくいかない結果ともとらえられます。

 このように、原因はひとつではなく複雑に絡み合っていることがほとんどで、ひとつの原因を特定することはあまり意味がないのです。

NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書 (ダイアモンド社 2023年2月)今村久美著

こちらの本は、2003年から活動しているNPOカタリバのスタッフにより書かれました。「みんなの知恵と経験を結集」「子どもに寄り添う親の伴走ガイドブック」と書かれてある通り、誰か一人のかたよった意見ではなく客観性のある情報になっております。ボリュームもあり、「まず最初の一冊」としては、この本をおすすめします。


原因よりもこれからのことを考えることが大事

不登校の理由が不明な場合も多くあります。ここでは、書籍などから、さまざまな専門家の「不登校の理由がわからないことが多い」との主張を紹介しました。

過去と他人は変えられませんが、自分と未来は変えられます。

子どもの不登校や登校渋りに対して原因が思い当たらず悩んでいる保護者の皆さんが、原因探しの迷路から抜け出して楽になっていただきたい。そのために、少しでも参考になれば幸いです。

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投稿者プロフィール

吉田 克彦
吉田 克彦公認心理師・精神保健福祉士
不登校・引きこもりの家族相談を行って20年超。
スクールカウンセリングから、東日本大震災の被災地心理支援、企業内カウンセラーなどを経て、現在は合同会社ぜんと の代表。