学校からの毎日の連絡、気が重いですよね。そのたびに、子どもに「学校に電話するけれど、今日学校行くの?」といちいち確認しているご家庭も多いかもしれません。そのたびに子どものつらそうな顔を見たり、気まずい雰囲気になることもあります。

毎朝の電話連絡は、学校に相談して止めることができます。しかし、家庭から依頼がない場合学校から連絡をせざるを得ません。この記事では、スクールカウンセラー歴20年以上の筆者が、電話連絡を学校側が続けざるを得ない理由と、家庭から止めるために気を付けることを紹介します。

なぜ電話連絡で気が重くなるのか

なぜ、毎日の電話連絡が負担になるのか。時間の問題や電話の話題はもちろん、家族関係もとても影響します。それぞれ解説します。

時間がとられる

こちらの都合だけではなく、学校に先生がいる時間に電話をかけないといけません。また、電話をかけても、他の先生が出た場合、担任の先生に取次ぐのに時間がかかってしまうことなどもあります。朝の忙しい時間にこのやり取りを毎日するのは大変です。

わざわざ同じ話を言いたくない

休む理由がはっきりしていないからので「□□で休みます」という理由を伝えにくい場合もあります。「何でお休みなんですか?」「どこか調子が悪かったりするんですか?」などと、たずねられても答えにくい。毎朝、電話の前からそのことを考えて憂鬱になってしまうのです。

わざわざ同じ話を聞きたくない

担任の先生に「明日はこれそうですか?」「家庭訪問行っていいですか?」などと聞かれたり、「みんなで待ってますよ」「○○さんに担任が会いたがってたと伝えてください」など言われることがあります。そのたびに、うんざりしてしまう保護者さんもいらっしゃるようです。

電話連絡を通して家族への不満がつのる

朝の電話連絡、多くの場合は子どもの母親が連絡をします。しかし、母親以外が電話連絡することも可能なのです。この「他の家族が電話することもできるのに、毎日毎日自分が担当しなければならない」という状況が毎日繰り返されることは、地味にストレスとして溜まっていきます。

配偶者など他の家族に相談をしても「電話ぐらいでいいでしょ。そんなこともしたくないの?」などと言われて、ショックを受ける保護者さんもいらっしゃいます。

つまり、学校との電話が憂鬱なだけでなく、電話を自分に丸投げされていて、家族に協力してもらえない孤立感がつらいこともあるのです。

なぜ、電話連絡が必要なのか

保護者側の電話連絡の負担感について解説しました。もちろん学校でも負担はあるはずです。それでも電話連絡を続けているのはなぜでしょうか。

安否確認・安全確保のため

連絡がなく、生徒がしていない場合、一番心配なのは事故です。
「家は出たけれど、学校に来ていない」となれば、事故や事件に巻き込まれた可能性があります。家に電話をして「家にいること」「今日は休むこと」という2点を確認する必要があるのです。それで電話連絡をします。

教員によっては「本人に電話を代わってほしい」と言ったり、放課後家庭訪問をして本人に逢うことで「家にいること」を確認する場合もあります。

メールは読まない、SNSは禁止、アプリでも連絡は必要

なぜ、今どき電話なのか、欠席の連絡だけなら電話ではなく、他の手段でいいじゃないかという意見もあるでしょう。

まず、メールの場合ですが、担任が朝にメールを確認する余裕はありません。どうように、SNSでも確認ができません。そもそも業務用の個人のメールやSNSのIDを持っていない先生が多くいます。また、10年以上前では、担任の先生のプライベートの携帯メールやSNSで保護者と連絡を取るケースもありましたが、今はプライベートのSNSを保護者や生徒に伝えることはありません。当然ながら、勤務時間中はプライベートのSNSをチェックもしません。

学校によっては、出欠席の連絡をアプリで行う場合もあります。しかし、このアプリもまだ全国的に広がっているとは言えませんし、アプリの場合でも毎日連絡が必要になります。

学校から電話を打ち切りにくい理由

安否確認や安全確保のために電話連絡が必要なのはわかった。
でも、うちの子はずっと学校に行けてないので、毎日電話する必要ないのに。

学校が電話連絡を行う最大の目的は、安否確認、安全確保であることはご理解いただけたでしょう。ある程度不登校が続いて「今日も来ないだろうな」と分かっていれば、電話連絡をする必要はないはずです。しかし、電話連絡を続けるのには理由があります。

お子さんやご家族に誤解されたくない

学校から電話連絡を止めるということは、「学校がこの子を『学校に来る子』ではなく『学校に来ない子』だと認識している」ことを意味します。そのため「学校に来てほしい」「いつでも待っている」という学校側からすると「電話を止める」という決断は難しいものです。

実際に、学校から「毎日大変でしょうから電話連絡を止めましょうか?」と提案すると「うちの子どもを見捨てるのか」「学校は休む子どもに何もしてくれないのか」などとクレームを言われることがあります。担任は電話連絡を止めたい場合でも、実際にそのようなクレームを経験したことのある管理職や学年主任が「こういうこともあるから電話は続けた方がいい」と伝えることもあります。

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止めるには担任以外の学校関係者とも連携しながら

学校側では、安否確認・安全確保をするため電話をしています。また登校しないとしても「学校に来てほしい」「見捨てたと受け取られたくない」などの理由から電話を止められません。以上を踏まえて、対応を考えましょう。

担任に電話の際に「毎朝の電話での欠席連絡を止めたい」と伝えるだけでなく、さらに管理職や養護教諭、スクールカウンセラーなど別の学校関係者に話す方が良いことがあります。

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基本的には朝に電話連絡をするため家庭内でも忙しいですが、学校内でも特に担任は忙しい時間帯です。慌ただしい中で伝えると、言い方がキツくなってしまったり、担任の返答も「わかりました」の一言で終わったりすることがあります。そっけない態度に受け止められてしまい、お互いに「なんだか感じが悪い」印象になってしまいがちです。また、「すいません。無理なさらないでください」「結構ですから」「お気になさらずに」などのやんわりした表現の場合、断っているのか、気を使っているだけなのかわからない場合もあります。その結果、「『結構です』と断ったのに、相変わらず電話がかかってくる」などというすれ違いも起きてしまうのです。

「電話連絡を止めることについては、のちほど○○先生(管理職や養護教諭など)にも伝えておきます」などと付け加えることで「電話をしない」という意思が明確になります。

担任と保護者さんの間で「毎朝の電話連絡しなくていい」と合意をしていても、管理職や学年主任などから「それは、保護者さんが気を使って『電話しなくていい』と言っているだけだから、引き続き電話した方がいい」などと言われることもあるようです。管理職や養護教諭などがわかっていれば、そのような面倒なことにはなりません。

依頼する時は丁寧に

伝える場合の伝え方にも注意が必要です。「迷惑だから電話しないでください」「電話されると困ります」などと伝えるのは、厳しい表現のように思います。学校側の保護者さんへの印象も悪くなるかもしれません。「心配していただくのは非常にありがたいのですが、こちらから毎日電話連絡するのも正直負担になっているので、登校する時に電話をするかたちに変えたい」などと提案するのはいかがでしょうか。

口頭ではなく記録に残すため、連絡帳に書いて学校に持参するのが良いでしょう。連絡帳がない場合は、封筒に入れて持参することもできます。また、口頭の場合は、伝えた際に手帳などに「●月●日〷時〷分、○○先生に伝え、『わかりました担任に伝えておきます』と返答あり」などと書いておくと良いでしょう。

こちら側が書くと、相手も自然とメモを取ることが多いです。このようにして記録に残しておくことも大事です。

学校との関係は維持しよう

「毎日の電話連絡を止める」となると、担任としてはどうして良いのかわからなくなります。特に、担任の先生に伝えず、管理職などだけに伝えてしまうと、担任は対応に困ってしまうかもしれません。

毎日の電話連絡をやめても学校との関係は維持しましょう。例えば、

  • 毎週末に1週間分の学校の配布物を受け取りに行く。
  • 毎日は電話しないけれど、月曜日の放課後に担任と電話をする。
  • 毎月通っているスクールカウンセリングは継続する

など、いろいろな形で学校とのつながりを維持しましょう。

家庭側が学校とのつながりを維持していれば、学校としても安心してゆっくり様子を見ることができます。学校との関係を絶ち切ってしまうと、学校側の動きも見えなくなり、いきなり家庭訪問に来たり、電話をかけてきたり、あるいは何にもしてくれなくなることもあります。

電話連絡を止めるのも大事な相互理解のチャンス

毎日の欠席の電話連絡について、なぜ必要なのか、そして止める際の留意点を紹介しました。学校との関係が良好であった方が、良いことに変わりはありません。ただ「迷惑だ」「うっとうしい」「ゆううつだ」などと否定的にとらえてはダメです。学校側の事情も理解しつつ「ありがたいけれど、しばらくはそっとしておいてほしい」という思いを伝えましょう。

学校と保護者が良好な関係を維持することは、不登校克服に向けてもとても役立ちます。

電話連絡を止めること。そのやりとりも学校との大切なコミュニケーションです。ぜひ、相互理解のチャンスととらえて、家庭の状況を伝えたり、学校の思いを聞いたりすることもいいでしょう。

この記事が、多くの保護者さんと学校関係者のお役に立てば幸いです。

編集人プロフィール

吉田 克彦
吉田 克彦公認心理師・精神保健福祉士
合同会社ぜんと 代表
大学在学中にに不登校や引きこもりの問題を抱える家族支援を目的としたNPO法人を立ち上げる。これまで20年以上、不登校・引きこもりなど家族の問題についてカウンセリングを実践しています。
4人息子の父親。