この記事では、不登校との関連が深い「緘黙」についてご紹介します。
緘黙とは何か、原因、よくある誤解、緘黙に悩むこどもたちをどうサポートしてあげられるかについて取り上げています。

緘黙とは?

緘黙(かんもく)とは、ある場面では話せるけれど、別の場面では話せなくなる症状(場面緘黙)です。
不安障害の一種とされていて、多くは家庭以外や学校で話すことが出来ません。
大人でも緘黙はありますが、大抵は幼い時に発症する場合が多いようです。

例えば、幼稚園や小学校に新しく入った時、転校した時に、人前で注目されながら話すことにとても不安を覚えて、話せなくなってしまうのです。
一旦話せなくなると、次に話すとみんなからなんて言われるんだろう。と気になって、ますます話すことができなくなってしまいます。

原因は?

原因はひとつではなく、いろいろな要素が組み合わさって、話せなくなるといわれています。
この記事では代表的な3つをご紹介します。

行動抑制的な気質

脳の扁桃体が反応しやすいと、いろいろな刺激に過敏に反応します。
そのため、家の中では不安になることが少ないのでリラックスしていますが、家の外に出ると緊張してしまって話せなくなってしまいます。

環境の変化

慣れ親しんだ環境から新しい環境に変化したときに、大きなストレスを感じます。繊細なこどもは新しい学校や、新しいともだちに馴染むのに時間がかかるので、そうしたことがきっかけで話せなくなってしまう場合もあります。

発達障害との関係

ことばを理解するのがなかなか苦手なこどももいます。それで、家族の中ではよくしゃべりますが、より複雑で難しい会話をしないといけない学校では、話せなくなってしまう場合もあります。

よくある誤解

不安の少ない家庭ではよく話すのに、学校では話せないので、単なるワガママだと思われる時もありますが、話せる場面と話せない場面があること自体が「場面緘黙」の特徴です。
ワガママではなく、話したくても話せないんだということを理解してあげることが大切です。

親の育て方が過保護で、または厳しすぎるから話せないんだというのも、大きな誤解です。
緘黙に悩んでいる本人は、とてもおとなしい性格をしていて、周りの変化に敏感です。

学校でも問題行動はないので、先生から「学校で全然話さないんです」と言われて初めて分かったというケースもあります。
緘黙のあるこどもの親と、緘黙のないこどもの親には違いがないことが立証されているので、育て方に問題があるという説は撤回されています。

緘黙に悩むこどもたちをどうサポートできるか

学校や他の人の前で話せないこどもは、「話さない」のではなく、「話したくても話せない」ということを、周りはよく覚えておく必要があります。
できないことを無理にさせられたら、誰でもストレスですよね。それで、話さないことを責めたり、話すよう強要するのはやめましょう。

緘黙についてよく知らないので、良かれと思って話すよう無理強いしてしまう先生もいます。なので、親は「緘黙」について先生とよく話し合っておくなら、学校を安心できる場所にしてあげられるかもしれません。

書くことでコミュニケーションできるようなら、筆談したり、話さなくても遊べる方法を試したり、いろいろ工夫できるかもしれません。

さいごに

話したくても、緊張して話せなくなってしまう症状「緘黙」についてご紹介しました。
誤解されやすい症状なので、なかなか相談できずに、長い間悩んでおられるかもしれません。

緘黙について正しい知識が広がれば、もっとみんなが安心して、いきいきとした毎日が送れるようになりますよね。
それで、ひとりで悩まず、ぜひ専門機関に相談してみてください。

引用文献

https://h-navi.jp/column/article/35026386
https://mutism.jp/about-sm/
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/105/

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編集人プロフィール

吉田 克彦
吉田 克彦公認心理師・精神保健福祉士
合同会社ぜんと 代表
大学在学中にに不登校や引きこもりの問題を抱える家族支援を目的としたNPO法人を立ち上げる。これまで20年以上、不登校・引きこもりなど家族の問題についてカウンセリングを実践しています。
4人息子の父親。